ロビー・キーガルはすでに20歳を迎えた頃にはクレージーな奴としてカリフォルニアでは名の知れた存在だった。
果たして彼の何がクレイジーなのか、ということは常に周りのみんなの話題だった。
いたずらが過ぎる時もある・・・
酒に呑まれることもある・・・
物をすぐに壊してしまう・・・
しかしご存知のようにアメリカではそんなことは当たり前。
では、何が彼をクレイジーと呼ばせるのか?
彼は自分のやりたいことを見つけるとそのことだけに邁進する。
聞く耳を持たず、人間関係を顧みず、金銭感覚を持たず、強烈なこだわりを持ち、一心不乱に...捨てるものは何もない、傍若無人さが
その姿こそが彼をクレイジーと呼ばせる所以だと思う。
21歳の時、彼は自らのブランド「Creme」を立ち上げた。
仲のいい友達を誘い、派手なボードとウェットで旋風を巻き起こした。
アレックス、CJネルソン、クリスチャン・ワックら錚々たるメンバーが顔を揃えた。
その頃のボードは、どちらかというとライダー(クルーと呼んでいた)に合わせたボードがメインで、現在のように彼のコンセプトが全面に押し出されたものではなかった。
彼の行動は派手だった。常に周囲に刺激を発散していた。
23歳の時、現在のコンセプトブランド「Gato Heroi」を開始した。
「Gato Heroi」は開始早々から斬新なデザインのボードを次々と展開した。
現在のPIGブームの先駆けとなった「スムースオペレーター」、アレックス・ノストの魅力を最大限に引き出した「デスダガー」、コントロール性を高めたノーズライダーの傑作「チープデート」などなど...
2010年の初め、彼の目は世界に広く向けられていた。カリフォルニアという恵まれた場所にとどまらず、新たな挑戦の場を探した。
「FREAK WAIVE」と称したプロジェクトは、手始めにハワイに渡り、それから日本でそのショーをコンセプトにした盛大なショーを行った。
その足で、オーストラリアに渡り、おそらく彼はそこで衝撃を受けた。それからヨーロッパに足を伸ばし、イタリア、フランスでボードを削った。
作られるボードは以前にも増して創造性の溢れるものとなった。
その才能に気づき始めた一部のシェーパーたちは彼の後を追い始めた。奇抜なアブストラクト、クラシックPIG、ノーズの尖ったボード・・・しかし、どれも彼の本当のコンセプトを理解していないため、作られたボードは足元にも及ばなかった。アウトライン、ロッカー、デザインを真似ただけではボードの性能はまったく違ったものが出来上がっていった。代わってロビーの進化はさらに加速した。それはユーザーであるサーファー達の要望を顧みず、自分の信念に従って。
前述の様にロビーは2010年のオーストラリアへの旅でボードに対する考えが一変した。ロビーの信念は揺るぎないものとなった。「60年代後半の“ショートボードレボリューション”が興らなかったら、ロングボードの進化はまったく違った道をたどっていたはずだ。ロッカーやフィンの数によってその後のロングボードの進化はショートボードと同じ道を進むことになった。ロッカーをつけたりフィンを増やすことをしなくても、ロングボードの可能性は大きいはずだ。それは1967年に作られた『NEW GENERATION』を観ればわかるはずだ。彼らのサーフィン、ボードは異次元の可能性を秘めていたんだ」
そして彼は言い放った。
Style is everything.....
Function is important.....
Dynamic is reality.....
2011年には未開の波が点在するアフリカに近く、ロングボードカルチャーが発展途上にあったフランスの南西部バスクに拠点を移すべく行動を開始した。
そしてその冬、『ダイナミックエンデバー』はスタートした。
「最高のボードを作るために最高の波に乗ろう。誰もいないところで、誰も乗ったことのない波に乗りに行こう」
その趣旨に各国のフォトグラファー、サーファー達が同調した。
そして予定通り、未開の波に乗った。
12月1日、28歳となったロビーを仲間全員が祝福し、彼はそれまで経験のなかった家族的な雰囲気に酔いしれた。
アフリカでの折り返し点後もロビーの活動は精力的に続けられた。
彼の作るボードは奇抜なのではなく、クラシックだ。それはノーズライド一辺倒のシングルフィンロングボードの隆盛に風穴をあけた。
フランスで注目されたその性能はすぐにオーストラリアに飛び火した。
ロングボードでありながらノーズだけを意識するのではなく、スピードとトリム、そしてショートボードのようなマニューバー(あくまでもシングルフィンの)は、優れたサーファーが無数にいるオーストラリアの中でもトップクラスの若い世代に受け入れられた。
「ノーズライディングには退屈していたんだ。もっとスピードが出るほうが面白いよ。それにロングなのに信じられないくらいよく動くんだ。まったく違うよ、今までのボードとは」
「このボードは新しいフォイルだけどすべてが新しいわけじゃないんだ。古いものを進化させてるから面白いんだ」
そして4月5日、原宿。その流れを日本に運び込んだ。
ショーの進行の手際が悪かったのは、まさしく私たちシーコングのスタッフのせい。しかしそれを打ち消すように会場は熱気に包まれていた。
ロビーは興奮しながら「ロングボードの流れなんだ。世界中でシングルフィンロングボードの魅力は見直されたけど、それに続く動きが必要だ。この『ダイナミックエンデバー』はあと1年続く。1年後にはロングボードの世界も一変してるよ。みんなもうそれに気づきつつあるんだ・・・」
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大変遅くなりましたが、皆様のおかげで『ダイナミックエンデバー』ショーを無事に行うことができました。
ご来場いただきました皆様、ご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。
準備不足、進行上の不手際により、ご不満の残った方もいらっしゃると思います。大変申し訳ございませんでした。
2年ぶりの来日となったロビーのショーには世界5カ国から仲間たちが駆けつけました。そしてその全員がこのショーを絶賛してくれました。
またみんな必ず戻ってくると約束してくれました。
ロビーと知り合って約15年。今やロビーの魅力に取り憑かれたのは私一人だけではありません。
彼はこの勢いをそのままに『ダイナミックエンデバー』の集大成に向けてすでに行動を開始しました。
また速報ですが、ショーで一部流された写真家ペロ制作による「DYNAMIC ENDEVOUR」近日発売決定!
今後ともご声援よろしくお願いいたします。
シーコング藤沢店
田中