藤沢店の田中です。
アレックスノスト編、後編です。
サーフィンというカルチャーについて、格好いいとは何だろう?スポーツ的なコンテストサーフィンであれば、それは勝者に他ならない。
対してサーフィンカルチャーとは、古き良き時代のノスタルジーの愛好者の集団、つまり根本的に古いものが格好良くて、できるだけリアルに近いほうが良しとされる。
それにこだわるものを持ち、できるだけ当時に似せたものを作り、当時のスタイルで乗りこなすことが、格好いいのだ。
古いバイクや車の愛好家の集団と同じだ。
古いものを集めて持つことはこだわりとお金があればできるだろう。当時に似せたものを作るにはやはりお金が必要で、それにモノづくりの才能が必要だ。
当時のスタイルで乗りこなすことは、才能がすべてだろう。つまりアレックスノストはサーフィンのライディングスタイルが当時のサーファーがそのまま生まれ変わったように、しかも当時のサーファーよりうまく乗りこなすことができるという誰もがまねできない才能を持っていることが、世界一のサーファーと評価される理由なのだ。
カリフォルニアはもとより、オーストラリアのビーチに行けばアレックスノストの髪型、服装、ライディングスタイルを真似たサーファーをよく目にする。
それは誰もが1960年代のオールドスクールや70年代初頭のオーストラリアのサーファーのように、当時発展途上であった未開で自由なサーフィンの新しいスタイルを再現したいと考えているからだ。
そのためには当時を詳しく知る必要がある。しかしアレックスにとってはそれは容易なことだ。父親やその友人、ブラッキーズのレジェンドたちから当時のリアルな情報を手に入れることができる。
当時のライフスタイルを踏襲する古い車に乗り、スポンサーのVANSはアレックスのアイデアを取り入れたオールドスクールの衣類を提供する。
レジェンドたちからはボードの形状を細かく聞き取り、それを再現する。
そして作り上げたボードを、誰よりも昔風に、昔のスタイルで上手く乗りこなすのだ。
このすべてを兼ね備えているのはアレックスノストしかおらず、だからこそアレックスノストがサーフィンカルチャーをリードしていると言われる。
ポストジョエルチューダーと呼ばれる黄金世代の彼らを見れば(ポストジョエルチューダーと言われ出したのは、すでに20年以上前のことなので、それ以降はずっと彼らが現代のサーフィンカルチャーを牽引してきたのだが、日本では未だその感が否めないと感じることがある)、もっとわかりやすい。
まずはジョエルチューダーと同世代的、またはそれより少し以前として挙げられるサーファーは、マット&ブリタニー、タイラーハジキャン、デボンハワード、ミッチアブシャー、デーンピーターソン、ジョシュファブロー、ジミーガンボア達だろう。
そしてロングボードリバイバルブームに乗って景気の良かったアパレルメーカーからのスポンサードを受けて謳歌したポストジョエルチューダー世代としては、アレックスノスト、ロビンキーガル、タイラーウォーレン、クリスチャンワック、CJネルソン、コーディシンプキンス、JJウェッセル、ダレンユーデリー、ブライアンアンダーソン、ジャレッドメルたちが有名だ。
しかしクリスチャンワックとブライアンアンダーソンは不動産業に転身し、ダレンユーデリーは大工さんに、そしてコーディシンプキンスは消防士となりビーチワールドから遠ざかった。
結局、その形態は違えど現在もサーフィンを主に(サーファー、シェーパー)生計を立てているのは、アレックスノスト、ロビンキーガル、タイラーウォーレン、ジャレッドメルだけだ。
その中でロビンキーガルはフランスに、ジャレッドメルはバリに移住した。そしてタイラーウォーレンはよりアーティストに傾倒している。
つまりアレックスノストだけがサーフィンカルチャーを正当に継承している唯一無二のサーファーであり、そのことによって、すべてのサーファーの視線はアレックスノストに注がれるのである。
彼が次にどの時代背景のどんな形状のボードに乗るのか?そのボードでどのようなパフォーマンスを見せるのかが、気になってしまうのである。アレックスノストがサーフィンカルチャーを牽引しているという理由はまさにこのことにある。
私自身は長年活動している彼の音楽を正直まったく理解できないのだが、今年の5月にロサンゼルスのシアターで開催された彼のライブに2000人以上の人たちが詰めかけ、そこにたくさんのアレックスノストを見ると、やはり彼の大きな存在感を感じざるを得ない。
彼は説明もなく新しい形状のボードを作るが、モデル名はほとんど変わらない。私たちがお客様に説明をするのは非常に困難だが、それがアレックスのスタイルで、アレックスの次なるメッセージだととらえていただければ嬉しい。
彼の価値を表現、説明するのは困難ですが、彼の重要性を少しでもご理解いただければと思っています。
シーコング藤沢店
田中