藤沢店の田中です。
せっかく入荷したアンヒンジドですが予定していたボードと大きく異なっているために、未だデーンに確認中となっており、お待ちいただいていた皆様にご迷惑をおかけしております。
まことに申し訳ございません。
デーンだけは、と思っていたのですが、今回の間違いがどこで起こってしまったのかもわからない状態です。何とか今週中にははっきりとさせますのでなにとぞよろしくお願いいたします。
話は変わりまして、金曜日にライダーの中山祐樹君が遊びに来てくれましたが、「最近は千葉の海もシングルフィンロングボードが多くなってきた」と言っていました。
元来千葉はサイドフィン付きのハイパフォーマンスロングボードが多かったのですが、やはり時流ということでしょうか、多くのプロサーファーの方々もシングルフィンロングボードを楽しんでいるようです。
ロングボードにおいてフィンの数は大変大きな意味を持ちます。
「サイドフィンを外せば同じでしょ」という方もいらっしゃいますが、「フィンを外してもボードの形もコンセプトも変わらない」ので、実際にはやはりまったく別物と言わざるを得ません。
またその性能以上に、それぞれのボードが持つ文化的、歴史的な背景が違うので、カリフォルニアでは「小波の時はシングルフィンで、波が大きくなったらサードフィン付きのボードで」ということは、ほぼ起こりえないことです。
以前も書いたことがあるのですが、そのことを理解せずにボードを選んでしまうと、「自分がやりたかったことができない」、「欲しかったものと違う」ということになって、大変もったいないとおもうのです。
それはボードが悪いのではなく、思い込みによって間違えたボードを買ってしまったことによって起こります。
そうならないためにも、今一度、サーフボードの歴史的な変遷を知り、それぞれのボードの特徴の違いを知り、ボードを選ぶことが重要だと思います。
1950年代、60年代に一般に広まっていったサーフボードは、当初の木製からフォーム製に代わっても、大変に重く、そしてロッカーがほとんどなかったために、コントロールをすることが難しく、しかも大変なパワーを必要としました。
各サーフブランドはいかにボードのコントロール性能を高めるかに重点を置いてボードの開発を進めましたが、テクノロジー全体が現代ほど発展していなかった当時においては、飛躍的な進化を遂げるには約10年という歳月は十分ではありませんでした。
ようやく1967年頃よりオーストラリアにおいてボードのボリューム、形状に大きな変化がみられるようになり、1969年になってその進化はさらに加速しました。
サーフボードは急激に薄く、軽くなっていったのです。
そしてその後、ショートボードレボリューションが起こり、ボードは波の縦方向に動かすことが求められるようになった縦に、極端に短くなるとともに、ロッカーが強められ、レールにはエッジが施されました。
さらにその動きの性能を高めるためにフィンの数が2枚、3枚へと増えていき、素材自体もより軽量化が求められ、ポリエステルからスタイロフォーム、カーボンなどに変化していきました。
つまり1960年代からサーフィンをしていた世代は年を重ねるごとに、「サーフィンとはボードを動かすもの」と同義になっていったのです。
そして彼らがさらに年を重ね50歳代にさしかかったところ、精鋭化するショートボードに乗り続けることに負担を感じてきた彼らは、懐かしいロングボードを再び求めだしました。
しかしながらその形状は、懐かしい物とは大きく異なり、ロングボードの長さであるにもかかわらず、1960年代当時のボードとは比べ物にならないくらい軽く、薄く、ロッカーが強められたものでした。
そしてボトムには3枚のフィンがつけられていたのです。
彼らは長い年月のサーフィンライフの間に、すっかり嗜好がショートボード寄りになり、ロングボードの浮力を求めながらも、ショートボードのように動かすことを求めていたのでした。
復活したロングボードはその“進化した”形状によって、一気に普及したのです。
ところが2000年を迎える数年前頃から、サザンカリフォルニアではジョエルチューダーが古いタイプのシングルフィンロングボードに乗り神童と呼ばれるようになり、マリブ周辺ではマットハワード、ブリタニークイン、ジミーガンボア、ジョシュファブロー、タイラーハジキャン、そして若き日のデーンピーターソンらが真っ黒なウェットスーツを着込み、シングルフィンロングボードをトリム&グライドさせながら長いハングテンを決めたのです。
ロングボードの復活に寄与した世代は、相変わらずサイドフィン付きのロングボードをアップスンさせながらボードを当て込んでいたのですが、当時10代だった勢いのあるキッズたちは、わざわざオヤジのガレージから持ち出してきたビンテージのロングボードを持ち出すことに、その格好良さを認めたのです。
彼らは当時さながらにウォーキングとノーズライディングによってデッキの上を自由自在に駆けたのです。
このようにシングルフィンロングボードの復活は親父たちが興したのではなく、10代、20代の世代によってなされたのです。
つまり批判を覚悟で言えば、サイドフィン付きのロングボードで“波をしごきながら乗る”のは『親父スタイル』、シングルフィンロングボードで“波に乗る”のは『イケてるスタイル』なのです。
トリム&グライドで波に乗り続けられるのはシングルフィンロングボードに与えられた唯一の特権ともいえるものです。
閉店時間のため、雑な締めくくりとなりましたが、ぜひ、このようなバックグラウンドにもご興味を持っていただきながら、シングルフィンロングボードの楽しさを満喫してください。
シーコング藤沢店
田中
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////