藤沢店の田中です。
ご承知のとおり、5月8日~19日までの間、カリフォルニアに行ってきます。
まずその間に雑誌「Blue.」が発売されます。
今回はカリフォルニアのサーフカルチャーについて書かせていただいています。
特にこれからロングボードをはじめようかな、という方にロングボードというカルチャーとはどんなものなのか、ということについて書いています。
ロングボードをスポーツ競技のツールの一つとして選ぶのではなく、その背景にある文化と併せて興味を持っていただければと思います。
またこのブログで何度も、彼らについて”ルーザーズカルチャー”として書いていますが、どのように”ルーザーズ”なのかについても書いております。
ということで、ぜひ発売日の前日には本屋さんに並んでいただき、開店と同時にできる限りたくさんご購入をお願いいたします。
次に、留守中にカリフォルニアとオーストラリアからサーフボードが入荷いたします。
カリフォルニアからのボードは後日、中野からご紹介させていただきますので、今回はオーストラリアから入荷するボードにつきましてご説明させていただきます。
今回入荷するモデルは、『ダガー』、『プレイピッグ』、『スペースピッグ』、そして『ファットキャット』です。
「ご予約」表示以外はすべて、絶賛ご予約受付中です!
ご存じのように、ロビンが一向にボードをシェープしないので(現在カリフォルニアではやっているようですが)、カイエリスシェープのガトヘロイをオーストラリアに注文しています。
特に『ダガー』につきましては、何度も頼んでいるにも関わらず、今回のカリフォルニアでも作られていません。まったく天邪鬼です。
『ダガー』は、2004年頃、ロビンがアレックスノストのために作ったシグネチャーモデルです。
その前年、ダノーのお嬢さんと付き合っていた彼は突然、フラられてしまい、失意の中でロビンキーガルのボードに乗ることを決めました。(その失恋したときの気持ちを描いたアートボードは藤沢店に飾られています)
アレックスは、ダノーのチームライダーだった時、ピッグ系のアウトラインに深く長いノーズコンケーブを施し、中華包丁のような四角いフィンをテールに配した『アレックスノストモデル』を愛用していました。
突然の理由でガトヘロイのチームライダーとなったアレックスは、同じピッグ形状でノーズコンケーブを施したボードをロビンに作ってもらい、ロビンはそのボードに『NEWプレジャー』と名付けました。
もともと自分のライダーだったロビンとアレックスの大進撃が始まったことに、ダノーは気分を害し、それまで『アレックスノストモデル』と呼んでいたモデルを、俺の方が元祖だぞと言わんばかりに『NEWプレジャー』に対抗して『オールドプレジャー』と呼ぶようになりました(別の経緯ですが、わがままなトーマスキャンベルに愛想を尽かし『ピグナー』を『スーパーナーナー』と名前を変更しています)
『NEWプレジャー』は、すぐに日本でも発売されたのですが、当時としては馴染みのなかったピッグ形状に何となくべたっとした抑え気味のロッカー、そしてテールキックはジョエル系のノーズライダーかウェーバーのボードが主流だった当時のサーフシーンには受け入れられず、「なんか調子悪い」と散々な評価となってしまいました。
私はそのことをロビンに伝えました。「日本ではまだあのボードは早すぎるよ。もっとわかりやすくて、誰にでも乗りやすいボード作ってくれよ」と。
しかしロビンは「大丈夫だ。カリフォルニアでもわかってる奴はほとんどいないんだから」と答えました。
後に、雑誌「Blue.」にて、ロビンとアレックスが現代のサーフシーンのピッグ復活の立役者だと書かれているのはこんな理由によるものです。
『NEWプレジャー』を広めたロビンとアレックスは、次の展開に目を向けました。
ノーズコンケーブはノーズに行ったときに波のスピードとバランスをとるようにするために、ボードのスピードを遅くしてしまう。ロングボードの醍醐味は、ノーズライディングだけじゃないんだ。そもそもそのアイディアは1960年代には一般的じゃなかったんだ。もっと自由に、スピーディに波に乗れれば、その可能性は広がるはずだ。
そして彼らはスピードを追求した先端の尖ったボードを創り上げ、それを”ポイントノーズノーズライダー”とか”究極のピボットターンモデル”と呼び、その名を『デスダガー』と名付けました。
発売開始当時、『デスダガー』はそのモデル名のとおり、”殺しの剣”のように先端を赤く塗ったデザインが多用され、その異様なデザインもあって一気に人気モデルとなりました。
中途半端なピッグ形状ではなく、ポイントノーズとなると、ほとんどの方がノーズに対する執着がなくなっていきました。
ロングボードに乗るときに「ノーズに行かなければ」という幻想を取り払うと、こうも自由に楽しむことができる、ということがわかったのです。
ノーズの尖ったボードはパドリング時も、テイクオフの後も、ノーズが波を干渉しないので、格段にスピードが上がります。
ロングボードに乗っていながら、まるでショートボードに乗っているようにノーズに波のストレスを感じず、自由自在に動けるような気がするのです。
そして特徴のあるスカッシュテールを強く踏み込んだ時、通常のボードならそこで失速してしまうところを、ノーズの重量によってすぐに再加速し、次のセクションにボードを誘導してくれるのです。
彼らの創り上げたこの 『デスダガー』は、世界中に浸透したハイパフォーマンスピッグとは違い、ほぼ世界中のどこを探してもそれを真似たボードがありません。
それは大多数のシェーパーが彼らのコンセプトを理解できないからではないかと思います。
”どうしてもノーズ重視”、”パフォーマンスを目指すならロッカーとレールのエッジ”という固定概念から脱出できないのではないかと感じるのです。
そのためにこの形状を楽しむためには、『ダガー(旧デスダガー)』そのものに乗るしかないのです。
しかし、、、、肝心のロビンがなかなか作らないのです。
カイエリスフリントは間違いなく現在のオーストラリアのサーフシーンにおいて最高ランクのロガーです。
若くまじめでシェープに対する真摯な態度、ガトヘロイのボードに対する理解をロビンは100%信頼しています。
それはカイエリスのこのサーフィンを見ればご納得いただけるはずです。
この『ダガー』に乗らずして、現代のロングボードシーンは語れません。
シングルフィンロガーを自称するなら、ぜひ『ダガー』にご注目ください!
次回は『プレイピッグ』についてご説明させていただきます。
皆様のご来店、お問い合わせをお待ちしております。
引き続き、楽しい連中をお過ごしください。
シーコング藤沢店
田中