藤沢店の田中です。
カリフォルニア回想記の4回目ですが、今回はカリフォルニアを離れメキシコ編です。
ご存知のようにシーコングでは「マドルガーダタブラス」というブランドを取り扱っています。
これは現在、メキシコのバハカリフォルニア州のサンワニコ(通称スコーピオンベイ)居を構えるマットハワードどブリタニークインの二人によって生み出されたブランドです。
⇒ mateo&brittany の世界観が満載のインスタグラム
二人との出会いは、2003年ころ。ロビンとカリフォルニアのサンオノフレにいたとき紹介されました。
初対面のとき(サンオノフレ)
彼らは古いバンから強烈なアートを施したボード(コメット)を取り出し、ビーチに立てかけて談笑していました。
ロビンから、彼らはメキシコにある世界最高の波がある場所に住んでいること。今回カリフォルニアに来ているのは、現地で必要なソーラーパネルを買いに来たことが目的だと説明されました。
実際彼らはすでに購入していたソーラーパネルをバンの屋根に取り付け、サンオノフレでテストしていたのです。
その風貌からただ者でないオーラが漂っていましたが、ロビンから続いて次のようなことを説明されました。
彼らは元々はマリブ周辺を根城にするサーファーであること。
二人は重いシングルフィンロングボードに乗っていて、しかもめちゃくちゃサーフィンがうまい。特にグーフィーフッターのブリタニーがバックサイドで見せるマリブでのライディングは真似ができるものではなく、マリブの女王と言われている。今(当時)みんなが黒一色のウェットスーツを着ていたり、重たいシングルフィンでノーズライディングをやっているのはすべて彼らがやっていることを格好いいと思っている奴らが真似していることなんだということ。
マットはUCLAの芸術家の大学院を卒業した生粋のアーティストで、最近(当時)ビーチにたむろしているにわかアーティストとはまったく別物の本物であること。
有名なトーマスキャンベルによるムービー「シードリング」は、もともとマットが手掛けていた「ファインフロー」を観たトーマスキャンベルがそれに先んじてリリースしたもので、本来の映像コンセプトはすべてマットのアイデアであり、そのことについて両者間には強い問題を抱えていこと。
上記以外にもマットには数々の問題があるため、二人はカリフォルニアを離れ、メキシコの最果ての地ともいわれる場所に移住していること。
彼らのライフスタイルは誰にもまねができないので、カリフォルニアのコアなサーファーのあこがれの的であること。
などなど、ロビンは次々と彼らの逸話を語りました。
当時、英語もつたなかった私は彼らのオーラに圧倒されたこともあり、たわいない会話をしただけでしたが強烈に印象に残ったのを覚えています。
それから数年後、ご存知の方もいらっしゃるようにシーコングでは「サウスベイバイスクル」という自転車のブランドを作っていました。
その展開に合わせて彼らのデザインを使用したオリジナルの商品を作ろうということで、ロビンにメキシコに住む彼らにアポイントを取ってもらいました。
そして絵の原画を数枚買い取るという約束で、クリスとともにメキシコのラパスに飛びました。
ラパスにて
出発前、ロビンから「マットの目を直接見るな。カメラを向けるな」と注意を受けたことを覚えています。
実際、ラパスであった彼らは非常に物腰が柔らかく親切だったのですが、時折目の奥に見せる鋭い眼光や食事の時に見せた奇行に腰が引けることもありました。
3回目の再開はその翌年、せっかく知り合ったからその世界最高の波のあるスコーピオンベイに行ってみようということで、当時のナルーの編集長とスタッフの新井と3人で現地に行きました。
回を重ねるごとに彼らの親切心は高まり、私たちが降り立った空港が彼らの住むところから500キロ以上も離れているのにわざわざ迎えに来てくれました。
初めてのスコーピオンベイ
しかしまだこの時は初対面の2人に対しては完全に心を許すことがなく、また私たちも彼らの写真を撮ることにいちいち同意を必要としていました。
その後、私は2回、新井は1回現地にトリップに行きました。またたまにカリフォルニアで彼らに顔を合わせることもあり、徐々に彼らのボードやカレンダー、スケートボード、Tシャツなどを取り扱いようになりました。
2回めのスコーピオンベイ
3回めのスコーピオンベイ
彼らの作るボードや商品は一般的な商品と比べて私たちにとっても大変高額です。
しかし彼らが持つバックグラウンド、製造している場所の不便性、比類なきアート性、希少性を考えれば、マットに「これどう?」と問われれば断る理由が見つからないのが正直なところです。
「シーコングがやらなければカリフォルニアを含め他のサーフショップがすぐに取り扱うだろう」と思ってしまうわけで、ついついマットに押し切られてシーコングに並ぶボードも増えてしまっていました。
しかし一昨年、藤沢店の近所に住むショートボーダーの方が彼らのボードに興味を持ち、続けざまに2本購入していただきました。
そしてその方のインプレッションが大変良かったため、他のよくご来店されるお客様にその話をしたところ、その周りの方々、また以前から僅かでありながら支持をいただいていたユーザーの皆様に瞬く間に広がり、徐々に人気が高まってきました。
一見、変わった形状に見えるボードも強烈な個性とこだわりを持つマットとブリタニーが理由なく作っているわけがないとわかってきたのです。
乗った方たちがそれぞれに口にする評判はさらに周囲の方々を巻き込み、今やカスタムオーダーをされる方も増えてきました。
そういった状況の中、再び彼らのもとを訪れてみようと思いました。
4年ぶりの再会はまったく平穏なもので、彼らも以前なら聞けなかったようなシビアな事柄について面白おかしく話してくれました。
今回のトリップでは彼らの新居にもお邪魔しました。(全面が製造途中や完成したアートで覆われているため写真をお見せできないのが残念ですが)
室内に入った途端、私は彼らのすごさを再確認し、衝撃を受けました。
これを、この素晴らしさを日本の皆様にもお伝えしたい、と。
日本で唯一(カリフォルニアでも定期的に常時扱っているお店はありません)彼らの商品を扱っている者としてその責任を果たしたいと強烈に思いました。
4回めのスコーピオンベイ
そのために彼らを雑誌で紹介し、来日させ、また彼の地へのサーフツアーも約束を取り付けました。
彼らの世界観はあまりにも日常とかけ離れているため、説明をするのは容易ではありませんが、いつの日か彼らが本物のアーティスト&憧れのサーファーであることを皆様に知っていただければと思っています。
シーコング藤沢店
田中