大変ご無沙汰して申し訳ございません。
アフリカの北西の果てのキャンプ地はさすがに携帯やネットに繋げられる環境がありませんでした。
なにしろキャンプ地周辺はもちろん、市街地でも普段の足は“ロバ”が一般的なところです。
らくだに乗るヤン
また一昨日、キャンプ地を出発後は成田到着まで約42時間の大移動で、そのうえ体調が悪くなったためブログを更新することができませんでした。
今、時差ぼけで眠れないので午前2時からこのブログを書いています。
最初の予定では(すでに多くの予定が狂っていたのですが)28日にキャンプ地より戻り、11月30日の深夜から12月1日のロビーの誕生日を壮大に祝う予定でした。
ところがツアーガイドのカリームから「2日から5日にかけてどんどんと波が上がる」と説明があると同時に「まあ、どうせ28日にラバトのホテルに帰ってもやることないし、誕生日はこのキャンプ地でやればいいか。じゃあ、みんなで6日まで滞在を伸ばそう」と言うことになりました。
そのため、そんなことは事前に知らされていなかったラリーは飛行機とバスを乗り継ぎ、アンディとジョンジ、ルカは4WDのレンタカーを借りて、突然アフリカの西の果てまで来ることになったのですが・・・
ところがまたまたこの問題はそう簡単には収まらず、私とカリフォルニアから来ているラリーは1日に帰るとして、「やっぱり最低12月6日までここにいよう。そしてもっとデカイ波を当てようぜ」とロビーが言い出しました。
ところがいっせいに、
「おいおい待てよ、勝手に変更すんなよ。俺は帰るよ」
「さきに伸ばすったって飛行機はどうすんだよ?」
「もう金もないよ。ここの滞在費も出せないよ」と、声が上がりました。
結局、イタリアの二人とニューヨークのヤンは4日に帰国。ペロさんとオーストラリアのアンディは6日に帰国。ノースカロライナのブラッドとフランス人のカップルはロビーと15日くらいまで滞在することになりました。
問題はクリスです。
クリスは1日に私とラリーとラバトに戻り帰国する予定でした。
すでに銀行口座のお金は底をつき、延長の滞在費も荷物のオーバーチャージのお金もなく、その上アメリカ人にとっては1年で最も大事なクリスマスを前にお金がまったくない状態です。せっかく今年から彼女と暮らし始めたのに、最初のクリスマスから一文無しになることを考えただけでクリスの気は滅入っていました。「ガトヘロイからの給料は12月まで前払いしてもらっているから、おじさんの工場でバイトさせてもらってとにかく現金を稼がなきゃ・・・」
ところがそんなクリスの気持ちをよそにロビーが襲い掛かります。
「何言ってんだお前!ここに来ている意味がわかってんのか?」
「何がクリスマスだ!それにたった5日間延ばしたって稼げる金はたいしたことないだろ!」
「お金や家族に縛られるから人間は、とくにカリフォルニアの奴等はだめなんだ!お前だってわかってるだろ?あっ!?」
「ああ、わかってるよ・・・」
「俺達はそんな縛られた人間になりたくなかったんだろ?自由な生き方をするのがサーファーろ?」
「ああ・・・」
「じゃあ、お前も延長しろよ。俺はまだ60%くらいしか発揮できていないけど、お前は今最高潮の状態のサーフィンをしてるんだ。一緒に誰も乗っていないでかい波にチャージして名を残こそうぜ!」
「でも、本当にお金がないんだよ・・・お前だってお金持ってないだろ」
「金だったどうだっていいじゃないか」
「そんなわけにはいかないよ・・・」
「ここで15フィートの波をあてることと、お金のどっちが大事なんだ?」
「でも、そう言ったって・・・」
「おまえそれでもサーファーか?またあのカリフォルニアに戻って、くそみたいな生活送るのか?」
「・・・それしか・・・」
「わかったよ。いいよ勝手に帰れよ。俺はもうやめた。もう、お前となんか仕事しねえよ。あああ、だからカリフォルニアの奴はいやなんだ。金と家族と彼女のことばっかりだ。俺は自分で好きなように生きていくよ。カリフォルニアなんてクソ喰らえだ!じゃあな」
かわいそうなクリス・・・
と、上記のような口論が半日以上にわたって繰り広げられることになりました。
「大丈夫?でも、こんなことは初めてじゃないから安心しろよ」と私が声をかけると、「ああ、俺達は1年に2回くらいこんな状況になっちゃうんだ。大丈夫さ」と力なく応えるクリス。
結局、私と一緒に帰国の途につく決心は揺らぐことはありませんでした。
こんなロビーですが、これこそまさにロビーの真髄です。
ロビーが純粋に求めているのはいい波、いいボードを作り、そこでいいサーフィンをすることだけを追い求めているのです。
安定した生活とか人間関係などは無関係の世界です。
だから現在ではロビーのようにパッションがありクリエイティブなサーファー、シェーパーは存在しないのです。
本当に魅力的なボードを作り出すことができる理由はそこにあります。
彼が作るのは決してクラシックロングボードのレプリカではなく、無限の可能性を秘めた“シングルフィンロングボード”なのです。
そしてそんなロビーに惚れ込む人たちもまたいるのです。
12月1日のロビーの誕生日のために、アフリカ大陸の西の果てに6カ国8地域の人が集まったのです。
各国の言葉で「ハッピーバースデー」を歌い稀代なサーファーでありシェーパーであるロビーを祝いました。
家庭的なものを拒絶するロビーがそこで見せた顔は彼の本来の魅力を物語っていると思います。
次回からは、発売中の『ジャングル・アシッド』の魅力、ライディング映像とともに、“SURFAR!”の模様を詳しく紹介させていただきます。
ご期待ください。
シーコング
田中