藤沢店の田中です。
まずはこの2本のボードをご覧ください。
これらのボードは2018年、シーコングの20周年を記念して、デューイウェーバーと当時存命だったリッチハーバーによって作られたものです。
黒のボードは言わずと知れたデューイウェーバーの代名詞でもある『ザ・パフォーマー』で、1967年にデザインされて以来、一切の変更なく今日まで作り続けられているサーフボード史上に燦然と輝くベストセラーボードです。
今や希少となった当時を彷彿させる幅の広い2インチのバルサストリンガー、これも当時を象徴するピグメントカラーのパネルでボードをラミネートしています。(当時は素材のブランクスの品質が悪く穴だらけのものが多かったため、それを覆い隠すために不透明な樹脂カラーが用いられていました)
フィンは寄木によるハチェットフィン。すべてが昔のままに再現されています。
発売当時、年間2000本以上販売されたという伝説のボードは、この日本では「無敵のテイクオフモデル」として、すでに2万本近くを販売するに至り、新たな伝説を作ることとなりました。
もう1本のオレンジ色のボードは、1959年、当時初めて作ったボードの出来栄えに満足がいかず、次のボードが上手くできなかったらシェーパーの道を断念しようと決心してシェープに臨んだリッチハーバーの生涯2本目のボードのレプリカです。
このボードの完成度を見た多くの友人たちが彼にサーフボードを注文したことによって、リッチハーバーはその後60年にわたってカリフォルニアのサーフシーンに君臨してきました。
そして奇遇たことにレプリカとして作られたこの記念ボードは、リッチハーバーの生涯最後のシェープボードとなったのです。
1960年代、サーフィンは新しくカルチャーのシーンに登場し、アメリカの豊かな文化の象徴でありました。
ビーチには想像を絶するほどのサーファーが押しかけ、いつもパニック状態に陥っていました。
その状況の中、各サーフブランドは大量にサーフボードを製造し続けました。
右から左にサーフボードが売れた時代、残念ながらボードの多くはシェープの良し悪しを語ることもできないほど悪質なものが多く出回りました。
その状況に危機感を抱いたリッチハーバーは、正確に同じボードを作り、品質が保てるようにマシンシェープを取り入れることに挑みました。
現在では「マシンシェープ?ハンドシェープの方がいい」という方もいますが、時代が変われば人々の価値観も変化するように、一貫した品質管理と少量高品質の方針が人気を博し、2023年の現在まで、当時と同じ場所で営業を続けている唯一のサーフブランドとなりました。
まさに信頼の証です。
現在のサーフシーンは当時よりさらに複雑化し、混とんとしています。
まずそれぞれのカテゴリーに特化した専門の雑誌がなく、サーフボードを買うにしても何を選べばいいのか、その本質を知ることは困難です。
インターネットで検索しても「まとめサイト」ばかりが表示され、そこで紹介されているのは明らかにアフィリエイトで紐づけられたボードばかりで、おすすめの理由さえとても信頼できる内容ではありません。
「せっかくだからいい物が欲しい」と思っている方でさえ、ご自分の理想のボードに出会えることは難しい状況です。
サーフィンという文化の本質を知る手がかりさえ見つけるのは困難で、真の情報にたとどつく前に、偏った情報を与えられ、その後の方向性は永遠に本質にたどり着けないことになってしまいます。
いつも雑誌やこのブログで書いていますが、コンテスト主体のスポーツサーフィンを除くサーフィンの本質は古き良き時代の文化へのレイドバックです。
古き良き時代のものが、当時を感じさせてくれ、心を豊かにしてくれるのです。
多くの方はサーフボードを選ぶときに、そのことを知っていながら「機能性重視」で選ぼうとします。
古き良き時代に作られたものに、現在の最新の素材も最先端のテクノロジーはありません。
だからこそ、古き良き時代のものに多くの人は惹かれるのです。
そう理解していれば、サーフボードを選ぶ基準はまったく違ったものになります。
「古いトラックにしようかな」、「昔のスポーツカーにしようかな」という、単一的な風合いが、現代社会と隔たりを持つことができ、それが趣味としてのサーフィンの楽しみを広げてくれるのです。
もし今このブログを読んでいただいてる方の中で、次のボードを考えているのであれば、迷わず、1960年代から続くブランドのボードをおすすめします。
古い映像を探し出し、当時を感じながら同じように乗ってみようと思うだけで、サーフィン、ロングボードの楽しさを何倍も体感できることでしょう。
絶対に後悔しない選択です!
皆様のご来店、お問い合わせお待ちしております。
シーコング藤沢店
田中