藤沢店の田中です。
昨日は恥ずかしくもロビンキーガルのことを褒めたたえてしまいました。
しかし彼のもう一つのすばらしさは、コンセプトを究極なまでに追求したガトヘロイよりもむしろ「Creme」のボードにあるかもしれません。
ご多分に漏れず、ロビンキーガルもシェープを始めた頃の彼のボードは細身のアウトラインが特徴でした。
当時、定番ボードとして人気の高かったモデルTは22.75インチ。それに対して“宇宙一のテイクオフ”で現在も人気を博すデューイウェーバーの『パフォーマー』、『スタイリスト』は24インチ。
人生初のサーフボードをドナルドタカヤマ氏にオーダーし、ウェーバーのチームライダーだったロビンキーガルはスタイリッシュとスピードを求めて細身のボードを作っただけではなく、1960年代の名作と言われるボードの多くが22.5インチだったと知ってのことだったのでしょう。
もちろん若く、サーフィン技術の高い彼に、「日本は波が小さいし、人が多いから、まずテイクオフが速いボードが必要なんだ。だからボードの幅をもっと広くしてくれよ」と頼み込んでも、彼は聞く耳を持たず、細身のボードをさらに薄く仕上げた現在のガトヘロイに通じるコンセプトボードを作ることにのめり込んでいきました。
2010年頃、最速のテイクオフで知られるデューイウェーバーの製造体制の見直しのため製作本数が激減する事態が起こりました。
シーコングにとっては”鉄板”のボードがなくなってしまうと困るので、再びロビンに頼み込みました。
「お前天才なんだから、ウェーバーよりテイクオフが速くて、しかも性能がいいボード作れるだろ?お前が幅広いボード嫌いなのは知っているけど、シーコングを助けると思って作ってくれよ。何しろお前は天才なんだから、簡単だろ?」
と、持ち上げまくって、彼をしぶしぶと納得させて作ってもらったのが『ビーチボール』です。
来日中だった彼は東京駅の地下の喫茶店でお気に入りのモーニングのバタートーストを口に入れながら、「ボードは作るけど、ガトヘロイのコンセプトじゃないからガトヘロイのロゴは付けたくないんだ。どうしようかなあ…」と言いました。
そしてその横で好物の(といってもベジタリアンなだけですが)サラダバーを食べながら、「またクリームでいいじゃん。あの会社潰れちゃったんだろ?」とアレックスノストが言いました。
元々、Creme(クリーム)というブランドを立ち上げたロビンキーガルでしたが、Creamというイギリスのスケートボードのメーカーから「名前を変えるか、金を払え」と訴えられたため、ブランド名をGATOHEROI(ガトヘロイ)と変えていたのでした。
しかし、2010年頃にはとっくにその会社は倒産していたので、アレックスはそう提案したのです。
年齢は2歳年下ですが、ロングボード界においての絶対王者であるアレックスがそういうのなら、ロビンもその提案に「そうだな、そうしよう」とあっさり決めたのです(今ならそんなことは絶対にありえないのですが)。
期待に応えてクリームの『ビーチボール』は発売より、圧倒的な人気となり、すぐにシーコングのベストセラーとなりました。
ところが、2011年の11月、ロビンキーガルの人生の転換点ともいえるアフリカ大陸ウェスタンサハラへのアドベンチャートリップ”ダイナミックエンデバー”の途上、彼は「新しいロングボードを作ってきた。このボードはロングボードの答えだ。モデル名は『アンサー』だ。だからもう『ビーチボール』は作らない」と、勝手なことを言い出したのです。
私が何度も「それじゃ困るよ。『アンサー』はボード幅が22.5インチしかないじゃん。鵠沼の波には細すぎるよ」というと、彼は「大丈夫。このボードはテイクオフも速いし、ノーズもできるんだ。俺が乗って見せてやるから、しっかり撮影しとけ」と言い切りました。
結局彼の固い意志に押し切られ大人気だった『ビーチボール』は突如杯盤となり、代わりに『アンサー』を売ることになってしまいました。
「このボードはテイクオフ速くなさそうだし、ロッカーないし、大丈夫かなあ」と私はとても心配していたのですが、その心配をよそに『アンサー』は発売直後から絶好調の人気となりました。
その理由は、はばは狭いのですが両サイドのレールは非常に平行のラインが長くデザインされていてボードを安定させていたことと、それまで見たことのないようなスマートなアウトラインがノーズライダータイプのボードに飽きを感じていた方々のストレスを発散したのだと思います。
とにかく『アンサー』はアウトラインが格好良く、性能も他のボードとは一線を画していて、現在も中古ボードがほとんど出ないことから、その性能の高さを後から知ることとなりました。
しかし私としてはやはり、幅が広く安心感のあるボードが絶対に必要だと感じていました。
そこで再びロビンに「アンサーもいいんだけどさ、もうちょっと幅の広いボード作ってくれよ。ウェーバーの『スタイリスト』並みのテイクオフの速さがあって、なおかつもっと速くて、コントロールがしやすいスペシャルなボードを作ってくれよ。お前天才なんだから作れるだろ?」とワインを注ぎながらお願いしたわけです。
とにかく餌と飲み物を与えてやれば言うことを聞くのは野良犬並みのロビンです。そうしてやっとベストセラー『ファットキャット』にたどり着いたのです。
前述のとおり、『ファットキャット』は”宇宙一のテイクオフ”を誇るウェーバーの『スタイリスト』に対抗して作られたモデルです。
なにしろ『スタイリスト』はシーコング創業以来のベストセラーです。経験の少ない方でもどんな波でも乗れるほど、絶対的な安定感のあるボードです。
その上、ノーズとテール部分はとても薄くシェープされているので、ターン時にレールが入りやすく、またモッタリとした重さも感じずに、とても簡単にターンができる優れものです。
その『スタイリスト』に対抗して、それに勝るボードを彼は創ったのです。
ボードの幅は約1.5㎝狭くなっていますが、ロッカーが抑えられているためにボードのスピードが速く、それによってボードを安定させるのです。体重が80㎏以上で、同じ長さのボードであれば、『スタイリスト』の方が楽にテイクオフできるのは間違いありません。
でも体重が80㎏以下の方であれば、その幅を気にすることなく、あらゆる面で『ファットキャット』の方が性能が優れています。
この結果を見てロビンは「それでも歴史は変えられないんだ」と言いました。
そうなんです。『スタイリスト』はテイクオフだけではなく、歴史を持ったボードです。1967年にデザインされたこのボードは、長い間、そのデザインを変更されることなく、サーフボード史に名前を刻んできた名作ボードです。
『ファットキャット』がどんなに素晴らしくても、まだ歴史に名を刻んだわけではないと、ロビンキーガルも自覚しているのです。
初代『ファットキャット』の発売から、すでに10年が経ちました。その間、ロビンは8度のマイナーチェンジを施しました。
彼の”いいサーフボード”を作るという執念に終わりはありません。
私が「もう十分だよ」と言っても、彼は聞きません。
何度も何度も微妙な調整を行い、海に出ます。
ときには、「それって2つ前の時と同じじゃん」ということもありますが、彼はそれでもボードを進化させることをやみません。
そうやって作られてきたボードが現在の『ファットキャット』です。
シーコングの依頼によって創られたこの『ファットキャット』は日本専用モデルとして作られたのですが、たまたまフランスの工場を訪れたスペイン人、イタリア人が購入しました。
その評判を聞いたヨーロッパ各地のサーファーがロビンのファクトリーを直接訪れ、シーコング用に作られたボードを横取りしていきました。
そのことに気をよくした(私は気を悪くしたのですが)ロビンは、オーストラリアのイベントで『ファットキャット』の販売を試みました。
オーストラリアと言えばサーフィンは国技である通り、すべてのサーファーのスキルはとても高く、また長い海岸線には完璧なポイントがいくつも存在しています。
そのために”テイクオフが速いイージーボード”なんて必要ないだろうと思っていたのですが、以外にもその手軽さ、簡単さがサーフィン、特にロングボードの原点を感じさせるということで、あっという間に普及していったのです。(私のおかげです)
というように、今やクリームだけではなく、ロビンキーガルの代表的モデルとなった『ファットキャット』ですが、その『ファットキャット』が、5月7日までは「もし購入して気に入らなかったら、返品していただいて構いません。お金もお返しします!」というキャンペーンを行っているのです。
私たちはこの『ファットキャット』は一般的なサーファーの方々が使用しているすべてのボードよりも性能が優れているという自信を持っています。またこの『ファットキャット』は伝統的なカリフォルニアサーフィンカルチャーの本流を継承しているボードでもあり、ロングボードの持つ魅力を最大限に味わえます。
年齢、技量、性別を選ばず、この『ファットキャット』が1本あれば、どんな波のコンディションでも、たくさんの波に乗って、楽しめるボードです。
”返品保証”は私たちの自信の表れですが、だからと言って「返品したら悪いな」と気にする必要はございません。
今のボードに不満のある方、次のボードを検討中の方、ぜひこの機を逃さず、この”返品保証”キャンペーンをご利用して、安心してボードをご購入ください。
皆様のお問い合わせ、ご来店をお待ちしております。
シーコング藤沢店
田中