藤沢店の田中です。
毎日のようにカリフォルニアのグラスショップ「ウォーターマンズギルド」のインスタグラムにはシーコングに届けられるボードがアップされています。
「ウォーターマンズギルド」はカリフォルニア屈指の高級グラスショップ(サーフボードのラミネート、カラーリング、仕上げなどを行う工場)で、シーコングが取り扱うガトヘロイ、クリーム、デューイ・ウェーバー、ハーバー、ソニー・バードマン、ジョンペックの他にもタイラー・ハジキヤンなどのラミネートも行っています。
高級グラスショップ?といってもピンとこないかもしれませんが、サーフボードはシェープもさることながら、その仕上げ次第でまったく出来栄えも存在感も変わってきます。
今日はウォーターマンズギルドで製作中のボードの写真から、『いいボード』とは何が違うのか?をご説明させていただきたいと思います。
1.ストリンガーは超高級の2インチ(5センチ)幅のバルサストリンガーと両サイドに1/8インチのレッドシダーを施したTバンドストリンガーです。ウッドを組み合わせたテールブロックとカスタムメイドのウッドのDフィン仕様です。クロスは8オンスのボランクロスを使用し、フォーム素材はUSブランクスの“クラシック”という20%高圧縮された硬くて重いものを使用しています。分厚いボランクロスに浸透したレジンの層の厚みによって深い光沢感が生み出されます。
2.ちょっと見えにくいですがストリンガーは全体に馴染むように1インチのバルサストリンガーを使用し、ボランクロスを使用しながらもボードにしなりをもたせるようにしています。ラミネートはガトヘロイのエバンが行い、約12年前に作られたオリジナルの“クリームアブストラクト”を再現しています。ラップライン(デッキ側とボトム側から色付けされたガラスクロスが巻き込まれることによって重なり合ったレールの淵の部分)を幅広にすることによってよりクラシックな雰囲気が強められています。
3.ストリンガーは高級な1インチのレッドウッド。シダーに比べ重く硬くなるのでスピード系のボードに使われボードのブレや振動を抑えます。サイドのカラーはピグメントのホットコートでエアブラシのカラーに比べ厚みと重厚感があります。非常にたまがかかる作業を要するため、日本製のボードではほぼ見かけることはありません。
4.ストリンガーは2本の1/4インチのレッドシダーでフォームを挟み込んだダブルストリンガーです。バスウッド(割り箸のような色のストリンガー)に比べ高級感が増し、比較的柔軟性が高いので2本組み合わせてもボードに十分なしなりを確保します。カラーはアブストラクトでボランクロスを使用しているために深い光沢感が質感を高めています。
5.ストリンガーは1/8インチのレッドシダーですが、特に色の濃い細めのものを選択することによってシャープな印象のスタイリッシュなボードに仕上がります。テールブロックは木製ではなく、クラシックの定番であった圧縮フォームを使用し、スッキリした印象に仕上げられています。
6.ストリンガーは1/4インチのレッドシダー。クリアーのボードの両サイドをピグメントカラーでホットコートされています。色部分の被膜は薄いので高い熟練の技術力とクラシックを知り尽くしたセンスが必要です。
7.ストリンガーは3/8インチと広めで重量とともに高級感、存在感が増します。カラーはモスグリーンのティントでラップ部分が意識的に広められ、ストリンガーとともにクラシック感を高めています。
8.カラーラミネートが終わり、サンディング、トップコートを待つ製作中のクリームの『ファットキャット』です。シーコングのすべてのボードには、フィンボックスを付ける部分に1枚余分のクロスが貼られ(クリーム、ガトヘロイの場合は波型にカットされています)ボックス周辺及びボックス先端の補強がなされています。
9.1/8インチのレッドシダーを中心に1/4インチの圧縮フォーム、更に両サイドを1/4インチのレッドシダーでサンドイッチした高級ストリンガーです。このボードも2インチ以上のラップラインでクラシック感を高めています。いいストリンガーはボードの存在感を高めます。
10.カラーラミネート中のクリーム『ファットキャット』です。ストリンガーは1/4インチレッドシダーのダブルストリンガー。ボランクロスを使用しています。
11.トップコートを施した後の『ファットキャット』です。ボランクロスを使用しているため深い光沢感が高級感を高めます。
12.エアブラシとは異なり樹脂を使用したピンラインはサイドパネル同様に見た目以上に手間がかかりますが、その分、高級感、クラシック感を高めます。
13.3/8インチのバルサウッドを1/8インチのレッドウッドでサンドイッチしたTバンドストリンガーです。クォリティと透明感の高いティントカラーはストリンガーを華やかに浮き上がらせます。
14.フォーム素材の段階で左右を切り、互いに入れ替えて接着し経年によれを防ぐことを目的としたフォームはグルーライン(黒い斜めの線)によって知ることができます。中央は1/4インチのレッドシダーを1/8インチのバルサで挟み込んだリバースTバンドストリンガーで、センスの良さを感じます。1960年代後半のヒッピーカルチャーを思い起こさせるペイズリーのファブリックがデッキにラミネートされた当時の定番スタイルが踏襲されています。
15.ボトム面はストリンガーを浮き立たせるように透明度の高いティントカラーを使用し、ラップでわかるようにデッキ面は不透明なピグメントカラーを使用しています。同色を使い分けることによってボードにセンスの高いアクセントを生み出します。
16.スピードグライダーの特性を生かすため太くて硬い1インチのレッドウッドストリンガーが用いられています。ボードに重量感が増し推進力を高めます。ボトムはそのストリンガーの美しさを無駄にしないように透明感のあるアブストラクトを施しています。
★一見、Tバンドストリンガーに見えますが、実際にはベニア材を使用した低価格のストリンガーです。
★シェープしたボードにそのままエアスプレイで色付けをしたものです。ショートボードなど軽量な仕上げが必要なボードに使われますが、高級感を損ないます。
いかがでしょうか?
サーフボードは実際には性能やコンセプトに基づいた細部のこだわりによって作られています。
ご自分のボードはどのようなストリンガー、色付けがされているでしょうか?
やはり細部にこだわりを持ち、お金をかけたボードは比べると放っている存在感が全然違います。
このようなことを頭に浮かべながらカスタムボードをオーダーしたり、ボードを探せば、ボード選びもより楽しくなるでしょう。
サーフボードは決して安くはないお買い物です。シェープや性能、バックグラウンドだけでなく、ボード自体の細部の仕様にまでこだわり選んでこそ、後悔しない『最高の1本』を手にすることができます!!
シーコング藤沢店
田中