藤沢店の田中です。
先日のデーンとのZOOMミーティングに続き、昨日はロビンと電話で話をしました。
相変わらず、電話嫌いのロビンはスピーカーフォンで話をするので、石造りの建物の中でその声が大反響し、なおかつ私もすでに過去2年間ほとんど英語を話す機会がなかったので理解力が衰えてしまい、結局のところ言っていることの10%も理解ができませんでした。
それでも私が彼と長時間にわたり会話を続けられるのは、彼がほとんど相槌の隙も与えないほど一方的にしゃべることと、またその内容には大した意味がないことを知っているからです。
そのような感じなのでついつい私は彼が話をしている最中に、他のことを考えていたり、携帯をいじったりするわけですが、絶妙なタイミングで「ちゃんと聞いてる?」「意味わかっている?」と聞いてくるのです。恐るべしです。
本来なら1月12日にフランス行きのチケットを持っていた私のスケジュールに合わせ(残念ながらこの状況なので中止延期となりましたが)、ロビンは一昨日前にポルトガルから戻ってきたということで、今月いっぱいは自分の工場の片付けなどをしているということです。
彼が工場を構えるフランス南西部のビダール(ビアリッツ近郊)はフランスのみならずヨーロッパでも有数の夏のバカンス地で6月から9月にかけて人が押し寄せるのですが、11月の後半から5月の中旬にかけては、太陽はほぼ姿を見せず、雹、みぞれ、雪が常に強風とともに吹き付けてくるという、とても住みづらい場所です。
またロビンの工場は下水処理場に隣接し、その地域の中では特に低い土地なので、年に数度の床上浸水をおこします。
今回もその床上浸水の最中らしく、久しぶりに帰ってきて、まずは工場の片付け、物干しに追われているとのことです。
彼は1月いっぱいはフランスの工場に留まり、時に日帰りで北方に5時間位かけて行ったところにあるポイントでサーフィンし、2月には暖かいポルトガルの南部に行き、3月になると再びフランスにもどりシェープを開始するということです。
大変羨ましい話ですが、実は彼の住むビダール(ビアリッツ近郊)エリアでは、他の住人もそのような感じで、6月から9月の間は高額で自宅を貸別荘として貸し出し、それによって得た収入で、冬の厳しい時期は南スペイン、ポルトガル、モロッコなどの気候が良く、物価の安いところで過ごすということは定番の生き方です。
ともあれ、彼は3月からはシェープを再開するようです。
デーンピーターソンとのZOOMミーティングについては先日簡単に書きましたが、ロビンとは対照的にデーンは堅実なライフプランを実行しようとしています。
「俺には妻もいるし、将来を見据えてしっかりと仕事を継続していく意思がある。他のサーファー達と一緒にするなよ」とはっきり言います。
私が、「デーンはオレンジカウンティじゃないからね」というと、「そうそう、そうなんだよ。俺はアレックスやジャレッドやロビンとは大違いの真面目な人間だ。オレンジカウンティ出身の奴らのように遊んで暮らしているわけにはいかないんだ。なんたってLAがベースの都会派だからね」と言っていました。
・・・先日書きましたように、以前からアンヒンジドのボードを使用していたカシアミーダーも正式にデーンのボードに乗ることになり、ローラミニョーとともに彼女たちの名前を冠したシグネチャーモデルも今年は発売されそうです。ぜひ、女性のサーファーの皆様もご注目ください・・・
そのデーンとの話の中でフランスのビアリッツ出身の写真家トーマスロディンと一緒に仕事をしてるんだという話がありました。
トーマスロディンと言えば、先日発売された「サーファーズジャーナル誌」のロビンキーガルの特集記事の写真を撮影したのもこのトーマスロディンで、現在最もホットなサーフ系のフォトグラファーです。
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彼のインスタグラムを見てみると、独自のアプローチでサーフシーンを追っていることがわかります。
被写体のサーファーも非常に個性的でフォトジェニックです。活躍の場を拡大している彼の作品を見れば、現在のサーフシーンのメインストリームを知ることができます。
あのデヴォンハワードも“His work leans toward the simple and clear,
but always expressive, fresh and approachable.” とウェブサイトにメッセージを添えています。
彼の作品、そしてデーン、ロビンとの会話を振り返れば、サーフシーンが徐々に変わってきているのではないかと思いました。
今風に言うと“サーフシーンが次のフェーズに移りつつある”ということでしょうか。
まず、サーフィンに関する嗜好が極めて本物志向になりつつあり、エコを意識したものも多く感じられます。
これがスポンジボードやエポキシ製のモールドボードに対してのアンチテーゼであるかどうかはわかりませんが、サーフィンの本質は機能や新素材、均一性とは関係なく、作り手のマインドが重要であり、時代の変化によってユーザーもそれを求めているということが感じ取れます。
また誕生初期の段階で性能を競い合い、その発展に寄与した車やバイク、自転車の開発が、時とともに競うことよりもそのもの自体の価値観を重視するようになり、最終的には古いものの価値を見出す文化へつながったことと同様にサーフィンに関しても同じ道をたどっているような気がしてきました。
社会の中に深く長く浸透することによって、競うことよりも個人個人のレベルで楽しむことが見いだされることによって、スポーツではなく文化として位置づけられているような感じです。
サーフィンをするからコンテストでいい成績を残さなければならない、ロングボードに乗ったら人より長くノーズライディングをしなければならない、ひとと同じように乗らなければならない、ではないという方向に時代が流れているように感じます。
・・・個人個人のレベルでもっとシンプルにサーフィンを楽しもう。友人と語らい、波をシェアし、時に一人で旅に出かける。新しいポイントを探すのも一つの楽しみだ。
その時に持参するサーフボードは、もちろん特別のお気に入り。
それはサーフィンがベースにあるからこそ楽しめる。
ロビンキーガルは長年、究極のサーフボードを創ることに精力を注いできましたが、昨夜の電話での彼はもっとリラックスしていて、ボードの性能についての話よりも、上述のようなサーフィンを主としたライフスタイルについて多く語っていました。
デーンのボードが著名なサーファーによって選ばれること、トーマスロディンの写真がテクニックよりもシーンを主体としていること、そしてロビンの嗜好の変化を読み取ると、まさにサーフシーンは次のフェーズに移行していると思った次第です。
コロナが蔓延し、世界中に大きな影響を与えて以来、その傾向はますます強くなっていると思います。
シーコング藤沢店
田中
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