藤沢店の田中です。
アレックスノストのガールフレンド、ダニエラより昨年の夏に撮影された映像が送られてきました。
昨年の夏と言えば、新型コロナウイルスがカリフォルニアでも猛威をふるっている最中でした。
いち早くロックダウン直前の3月にカリフォルニアを脱出しメキシコに渡ったロビンキーガルと5月になって脱出を図ったアレックスとダニエラ。
ともに向かった先は盟友マットハワードとブリタニークインが居を構えるスコーピオンベイでした。
ロビンとアレックスと言えば10代の中頃よりカリフォルニアのロングボードシーンで頭角を現し、時には協力して、時にはライバルとして世界のシングルフィンロングボードシーンを牽引してきた二人です。
一見仲良く見える彼らの間には長年の鬱憤の蓄積による(ほぼロビンのですが)多くの確執があり、2018年にスペインで行われたダクトテープの会場において壮絶な喧嘩をしてしまい、彼らをつなぎとめる糸は決定的に修復不可能になっていました。
その時の喧嘩の原因はアレックスに会ったのはそこにいた全員が知るところでしたが、日頃よりトラブルを起こさず人望の高いアレックスに比べ、常にロビンはトラブルメーカーとして知れ渡っていました。
それによってその場にいなかった者たちはみな口をそろえ「どうせロビンが・・・」となり、さらにいたるところで彼を非難する声が上がっていたのです。
それ以来ロビンはことあるごとに「あいつを殺してやる」と私に繰り返し言っていたほどです。
アレックスのガールフレンドのダニエラは大変な常識人で私がロビンとアレックスの間に挟まって苦労しているのを知っていて、また彼女もロビンの根っこの部分での性格の良さを理解していたので、どうにか彼らの関係を修復できないかと望んでいました。
そして昨年の夏、偶然にも二人が選んだ逃避先が同じ場所だったのです。
ダニエラの話によると、先にそこに住み着いていたロビンは自分のテリトリーからなかなか出てこず、アレックスとダニエラに対してもどこかよそよそしい雰囲気で、挨拶はしても夕食を共にすることなどはなかったそうです。
そんな彼らの態度に気をもんでいたのはマットとブリタニーも同じでした。
1990年代、ハイパフォーマンスロングボードが全盛のころに黒いウェットスーツを着込み、重たいシングルフィンロングボードに乗ってノーズライディングを始めたのはこのマットとブリタニーで、そのクールさに取りつかれたのがまさにロビンキーガルであり、アレックスノストであったわけです。
言ってみればマットとブリタニーはロビンとアレックスにとって自分たちのヒーローでもあるのです。
マットとブリタニーはバスを改造した自分たちのファクトリーに彼らを招き、そこでロビンにボードのラミネートをさせ、アレックスとダニエラをその場に来るように仕向けたのです。
ロビンキーガルはシェーパーとしての高い才能だけではなく、アブストラクトを現代に復活させた張本人でもあります。
彼の影響によって世の中には数多くのアブストラクトのボードが作られましたが、この映像を観れば彼の感覚が並大抵のものではないことがわかるはずです。
映像が荒いのでちょっとわかりにくいですが、準備しているのはオレンジとグリーンの2色で、それを時間差で使い分けながら、微妙なトーンを導き出しています。
そして最後はみんなに囃し立てられながら「フリーラップ」と呼ばれるロビン独特のラミネート方法を始めるところで締めくくられています。
これをご覧いただければ、1本のボード、特にロビン、アレックスやマテオのようにこだわりを貫く彼らによって作られるボードは、機械生産のボードとはまったく異なったものであると感じていただけると思います。
最後は素手でレジンを塗りたくるあたりを見ると、「カリフォルニアらしいな」と思い、早く彼らに会いと、悔しくも思ってしまうのです。
後半の映像も後日送られてくるようなので、楽しみにお待ちください。
シーコング藤沢店
田中