藤沢店の田中です。
フランスにいるロビンから久しぶりにメールが届きました。
しかし、ただ1行、「忙しい。シェーピングや“いろいろ”ほかのことで。来週説明するよ。フィッシュはなるべく早く送るよ。じゃあ」
彼らしいと言えば彼らしいのですが、“いろいろ”なことがはかどっていないのはよくわかります。
結局、対して何もしていないのだろと。
ただこれはロビンに限らず、他のシェーパー達も同じなので、サーフィン業界特有のものと言わざるを得ないでしょう。
2年前にオーダーしたウェーバーパフォーマー用のハチェットフィンが届かず、シーコングのカリフォルニア特派員にファクトリーを急襲させた顛末は以前にも書きましたが、ご存じのように未だそのフィンは届いておりません。
あれ以降何度か、「どうなってるの?」、「ちょうどパッキングが終わったところ」、「まだ来ないけど」、「ごめんごめん、今日ピックアップしに来るはずだよ」と、まるで落語の「蕎麦屋の出前」状態が続いています。
もはやこの状況に腹をたてたり、相手に何とか仕事をしてもらおうということが無駄であることを長年の経験で知ってしまった私は、ただただお客様に頭を下げることしかできません。
「大量生産の工業製品ではなく、正統なカリフォルニアのサーフィン文化を継承している手作りのものだから・・・」とお客様に説明しながら、それでも日々待ち続けている次第です。
そのロビンキーガルですが新しくボードがシェープされていないため、現在はハンドシェープの出物の中古ボードについては大変価格が上がっています。
コロナウイルスの影響で海に行く機会が増え、サーフボードにフォーカスすればするほど、最終的には彼のボードにたどり着くことは必然と言えます。
まだご覧になったり、実物を手に取ったりしたことがない方にはわかりづらいかもしれませんが、ロビンキーガルのシェープするボード、特に2013年以降に作られたボードは圧巻です。
もちろんそれ以前にも、ショーボードやいくつかの名品と言われるボードもあるのですが、後年になればなるほど、その完成度は高められています。
これはロビン自身がいつも言っているように「同じボードを作るのはコンピューターに任せた方がいいんだ。俺はシェープの最中にいいアイデアが浮かんだら、それをいかしたシェープをしたいんだ。絶対にいいってわかっているのに、同じモデルを作るということに縛られて、それを封じ込めることに意味はないだろ。シェーパーとして当然だ」という考えのもと、サーフボードを進化させているからです。
それと同時に彼の生活環境の変化も彼のボードの進化を後押ししてきました。
裕福な祖父母に育てられたロビンは、20年くらいまでの一般的なアメリカ人と同じく早くから自立を目指しました。(現在は18歳になっても家を出ずに実家に留まって、大切に育てられている若者が多いようですが)
故ドナルドタカヤマ氏に作ってもらった「モデルT」を皮切りに才能を開花させ、デューイウェーバー、タイラー、ダノーのライダーを経て、20歳を過ぎた頃に、パーソナルブランド「クリーム」を立ち上げ、その後は順調にロングボード界のメインストリームへと成りあがっていきました。
ロビンキーガルは若くて自らのブランドを成功させ、世界中にボードを売り、世界中を旅していると、カリフォルニアの若い世代の憧れとなっていきました。(後年ジャレッドもその当時のことを「ロビンは格好良かった。それにロビンについていけばいろんな経験をさせてくれたり、レストランでおいしい食事にもありつけたんだ。4歳上だけど、俺もそうなりたいと思ったよ」)
しかし現実には度を越えた浪費癖と人間関係の破壊によって常にぎりぎりの生活を強いられ、シェープをしようにも材料代やショールームの家賃さえも滞納を繰り返していました。
そんなときに登場するのが私の役目でした。
日頃は私の話など耳を傾けず、頼んだボードについても約束を守ることなどほとんどないのですが、生活が切羽詰まったところを見計らって「20本作ってくれるなら、先に全部払うよ」という私の言葉の誘惑に負けて、その時だけ彼は約束を守っていたのでした。
それでもオーダーしたものと、届くものが同じだったということなど一度もなかったのですが、才能が注入されたボードは新鮮で斬新で格好良く、ユーザーの皆さんを虜にしていきました。
人間関係の破壊による彼の自分勝手な行動と大いなる野望は留まることを知らず、舞台をカリフォルニアからフランス、モロッコ、再びカリフォルニアへと変えながらロングボード界におけるロビンキーガルの存在はますます巨大化していきましたが、その実情とシーコングにいいボードばかりが届いていたのは同じ理由からでした。
しかしその仕組みは育ての祖母の他界によって、崩れてしまったのです。
莫大な遺産を相続した彼は、以前と変わらず傍若無人な生き方と浪費癖を変えませんでしたが、以前のように「行き詰る」ことがなくなってしまったため、お金のためにボードを作るという必要がなくなったわけです。それは私が長年彼の首根っこを捕まえたことによって成り立っていた仕組みが崩れ去ってしまったことを意味しています。
彼はそんなことを口にはしませんが、明らかにシェープする本数が激減していきました。
それはお金を手にしたからさぼっているのではなく、シェープに対しての意識がより高まったとも言えます。それくらい彼はサーフボードのシェープが好きなのです。
彼はそれまで「ガトヘロイ」と呼んでいたブランドを「RK(レベルクラフト)」と呼び、モデル名にこだわらずにコンセプトを追求したボード作りに専念したい、と言ったことはその頃の私のブログに書かれているとおりです。
作家や芸術家が多作を必要とすることなく、大作を手掛けるようになったことに似ていると思います。
そのためにこの数年作られていたボードの完成度はそれまで以上に急激に高まりました。
1本1本のすべてのボードが完璧な仕上がりとなったのです。
そして現在、彼の視線は新たな方向にあります。具体的に書くと彼の猛撃を食らってしまうので書けませんが、彼が単なるシェーパーではないことを知るには十分で、素晴らしい野望であることは間違いございません(それが完成するかどうかは彼次第なのは言うまでもありませんが)
今後もロビンキーガルはシェープは続けます。しかしそれは以前のように、販売するために本数をシェープするのではなく、自身のシェープを追求するためです。お金のことが心配でない現在は、それだけに専念したいのです。
その中から自分の納得できたものをオーストラリアのカイエリスに託したいと考えています。
カイエリスは若くそのまじめな性格とサーフィン文化への傾倒、サーフィンの技術のどれをとってもロビンを満足させる存在です。
オーストラリアを代表するロガーとなった“カイエリスフリント”の素晴らしいライディングをご覧ください!
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ご覧のとおり、さすがロビンに認められただけあって、ちょっとその辺のうまい奴とは次元の違うレベルです。
長くなりましたが、そのような流れになるために、ロビンのハンドシェープボードはますます本数が減っていく状況にあります。
ということで、これからが本題ですが、シーコングではその状況はむしろロビンのシェーパーとしての才能を高めるものだと信じ、彼のボードを待ちながらも、カイエリスシェープのボードもオーダーすることにしました。
そして間もなく、それらのボードが入荷します。
すでに品質、仕上げに関してはクリームで確認済みなので安心していますが、やはり初回のボードは私も少し気になります。
ロビンキーガルのハンドシェープボードは入手困難となっていますが、その意思を継承したカイエリスのボードにつきましては、今後も入荷を予定しておりますので、ぜひご期待ください。
★初回入荷予定は、以下の10本です。
気になるボードがございましたら、お気軽にご予約、キャンセル待ちをお申し付けください。
★そして、オーストラリアより3本のファットキャットも入荷いたします
左右は、9'4ft 中央は、9'6ft です。
こちらも気になるボードがございましたら、お申し付けください。
ロビンキーガルのガトヘロイ、クリームだけではなく、シーコングで取扱うブランドはすべて世界で認められたトップブランドです。
中古ボードの相場は高く、この先何年経ってもその価値が落ちることはないでしょう。
ぜひ安心してお買い求めください。
皆様のお問い合わせ、ご来店お待ちしております。
シーコング藤沢店
田中
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